私は結婚するために2011年7月にモロッコに来ました。しかしちょっとのんびりしてしまって結婚の手続きが終了したのは、2012年になってからでした。いまだから笑って話せますが、その間に忘れられない出来事があります。モロッコで裁判所に行く羽目になったのです。これから海外で暮らすという方は【だめな例】として読んでみてください。
モロッコにやって来た。
この人と結婚する、と決め2011年7月、はるばるモロッコまでやってきました。
まだ、来たばかりだから、ちょっとのんびりしてから結婚の手続きをしよう。来月はラマダンで1か月何もできないから、今月のうちにバカンスを楽しもう!
そして、あっという間に2か月が過ぎました。
そろそろ、結婚の手続きをしよう。警察署に行かなければならないから一緒に行こう。私に任せて!
警察に行ってみると、夫がいろいろ手続きについて説明を受けていましたが、私は言葉が不自由なため何もできず、すべて任せきりにしてしまいました。
必要書類がいっぱいで大変だよ。仕事も忙しくなってきて時間がないよ。
もうすぐ、モロッコに来て3か月が過ぎてしまいそうになってきました。
モロッコに来て3か月を過ぎる前に滞在許可を取りに警察に行かなきゃダメなんだよ。連れて行って。
行かなくても大丈夫だよ。今、結婚の手続き中だから。この前警察に行ってパスポートも見せたじゃん!
あー、そうなのね。そいいえばこの間、警察の人が何か書類作ってたね。
警察署内のいろんな部屋をぐるぐる回ってきたし、そういうことなのね。
そして、なんだかんだで、時は数か月流れました。手続きをするために再び警察署で面談し、和やかに話は進んでいきました。警察の人が書類を書きながら「パスポートを出してください」というので、提出すると、パスポートを見る警察の人の表情がみるみる深刻になっていきます。指を折りながら数を数えて「長すぎる・・・」。彼の上司や同僚と思われる人にも私のパスポートを見せて何やら話をしていますが、みな、首を横に振るばかりです。
そして、「オーバーステイです。裁判所に行ってください。」ということになったのです。
私はまさかこんなことになるなんて、思ってもみませんでした。生まれてから30数年、真面目に生きてきたはずの私が、オーバーステイ。不法滞在です。同じ建物の中にある外国人課で滞在許可申請をしなければならなかったのですが、していませんでした。
本当に自分が情けないやら、この先の不安やらで泣きたい気持ちになりました。私の気持ちはそのまま顔に出ていたようで、警察の人たちが笑って「大丈夫、大丈夫!心配ないよ。」と慰めてくれました。
大丈夫じゃないから、裁判所に行くんじゃぁぁぁ!!
裁判所にて
夫に連れられて、裁判所に行きました。裁判所内をうろうろしていると、本当に偶然に、夫の昔からの知り合いだという弁護士さんに出会い、そこからは彼にすべてお任せすることになりました。彼は「罰金を払って終わりだよ。払わないで済むように頑張ってみる。」と言ってくれていくらかほっとしました。
夫は生まれた時からずっとマラケシュに住んでいる。そのせいか、やたら知り合いが多い。
それは弁護士の知人がいることを忘れるほどだったのだ。
数日後、弁護士さんから裁判所に出頭しなければならないと連絡が来たので、指定された日に裁判所へ行くと、法廷の傍聴席で順番を待つように言われました。法廷は日本の裁判所とだいたい同じような感じです。
私の順番になって、証言台の前へ立つと、弁護士さんが裁判官に私が日本語しか話せないから私の夫を通訳人とすることを申請するとすんなり認められました。
軽微な事案であること、通訳を探すのが困難であること、弁護士が予め事情を説明していたことなどの理由が重なって認められたのかなと思います。
モロッコ人の仕事ぶりとして、いいかげん、雑、何でもぐちゃぐちゃ、などのイメージがありますが、法廷内はモロッコとはいえ、厳かな雰囲気でした。名前、国籍、不法滞在した理由など簡単な質問しかされませんでしたが、緊張して声が震えたのを覚えています。
私は質問に対してすごく短く答えているのに
夫の通訳が長すぎるから、怪しまれないかヒヤヒヤしたよ。
けど夫も心証を良くするために頑張ってたんだよね。
あまり詳しく覚えていませんが、とにかく即日判決が出ました。弁護士さんの頑張りもむなしく、罰金を支払うことになりましたが、それだけで済んでよかったと思っています。
私、前科一犯ってことになったけどね。
その後、滞在許可を取り、いろいろな手続きを終えました。
ある日夫から「全部手続きが終わって私たちは正式に結婚したことになったよ。」と報告があったのですが、時間が経ちすぎてしまっていて婚姻が成立したことに対する感慨はありませんでした。
書類をよく見ればわかるのでしょうが、結婚記念日など、もはやどうでもいい気がして、いまだに知りません。
もしモロッコで結婚するという方がいるなら、大変でも結婚手続きは気合をいれてなるべく早く終わらせたほうがいいよ、とアドバイスしたいです。
私は何をすべきだったのか
モロッコの結婚手続きはとても煩雑で時間もかかります。何度もあっちへ行かされ、こっちへいかされ、あれが必要だ、これが必要だと、1回で話してくれれば済むものを1つずつ揃えていかなければなりません。
それからモロッコ人同士の会話は異常に長いです。夫と役所の係員が話をしていて、私が長時間待たされたとしても、たいした内容ではないことも多いです。「彼女は日本人なんだね。どうやって知り合ったの?僕も日本人の友達がいるんだ。モロッコから日本って時差はどのくらい?・・etc」と関係ない話でいっぱいだったりします。夏のマラケシュの強烈な暑さの中、だんだん、いろいろなことがどうでもよくなっていきました。
私が、裁判所のお世話になってしまったのは、やはり夫任せにしすぎたということだと思います。夫が悪いというのではなくて、自分のことは自分でやらなければいけないということです。
夫に限らず、モロッコ人は自信満々で間違ったことを言ってくるので、何事も自分で確認することが大切です。
今考えると「私は何もできない」ではなく、進行中の作業の内容を把握して確認をする、できる限りの推測を働かせて先を予測する、ぐちゃぐちゃになっている夫の頭の中を整理してあげてお尻を叩く、などやるべきことはいくらでもあったなと結婚10年目にして振り返って思います。
最後に
ルールは守らなければいけません。私は罰金で済みましたが、在モロッコ日本大使館のホームページを見ると「不法滞在は原則強制退去」となっています。滞在が90日を超える前に警察署の外国人課に必ず行きましょう。くれぐれもお気を付けください。