最初にフラガという民間療法の話、次に自然のものを使った日常の民間療法の話という構成になっています。
乳幼児向け民間療法「フラガ」
乳幼児のための民間療法「フラガ」についての話をします。2013年、息子が生後数か月の頃の出来事です。

赤ちゃんの元気がない感じがするよ。
良いところを知ってるから連れて行こう。
タオルとおむつ、着替えを準備して。

良いところ?

モロッコの伝統的な病院ですよ。子供が元気になるんです。

え?元気がない?私は気が付かなかったけど・・。
それなら病院だね。
こんな流れで連れて行かれたのは、旧市街にあるごく普通の家、看板もありません。
その家の前まで来ると義母は「自分1人だけでいい」と言い息子を連れ、中に入っていきました。
夫に聞いたところによると、施術するのはその家のおばあさんで、資格が必要というものではありません。営利目的ではなく、自分が治療技術を持っているからみんなの幸せのために善意でやってあげているのだそうです。(ただし、大抵は自発的に2~3百円程度のお金を置いていきます)
実際の施術後の写真がこちらです。

衝撃。
おへその周りを鋭利なもので引っ掻いたような傷跡があります。
血が滲んでいます。

鼻の周りとおむつの中はスパイスまみれ。
漢方薬店の匂いがします。
施術後は機嫌もよく、痛がる様子もありませんでした。
知り合いの日本人の方とこの話をしたところ、

そうそう、知ってる!引っ掻く場所はお腹だけじゃないのよ。
私の夫は、首と腰にいまだに傷が残っているわよ。

うちの子も連れて行ったよ。
両足を掴んでさかさまにしたり、水でびちゃびちゃにされたり結構激しいんだって。
「行かない方がいい」って私は家族に止められたよ。
施術後は子供の機嫌が良くて調子がいいことは確かだね。

えっ!?傷が残る!!もしや水責めの荒行・・。
ねぇ、これは噂に聞くモロッコの魔術では?!

魔術ではありません。全然違います!これはモロッコの伝統的な治療です。
調べて見て下さい。ferragaというものですよ。
モロッコ毒物センターからの警告
だいぶ後になってから調べてみたら、モロッコ毒物センターというところから警告が出されているという記事を見つけました・・。
その記事によれば、「施術するのは盲目の高齢女性が多く、技術は口伝いで継承されるので、欠落する技術情報もあり、衛生的にも問題がある。」
フェラガが推奨する植物混合物摂取後に、死亡した事例が2件あったことから警告がだされ、禁止されるようになったそうです。記事はこちら
記事内容と私の見聞きしたことがぴったり合致するので、子供を危険にさらしていたことにショックと申し訳なさを感じました。何事もなく終了して本当に良かったです。
記事は2012年1月、私達が行ったのは少なくとも2013年3月以降なので周知・徹底には時間がかかるということでしょう。
危険があるというのは理解した一方でなんだか残念な気持ちもあります。
モロッコの伝統的な文化であり、施術によって体調がよくなった人もいるのは事実です。

人に助けてもらわないと生活できない盲目の女性たちが、
自発的に他人のためにできる数少ない行為のうちの1つなんです。
施術を受けた人は、生活が厳しいであろう彼女たちのために感謝の気持ちとしてお金を置いていきます。

労働と対価ではなく、
助け合いの世界なんだね。
魔術のような治療は、不思議の国と形容されるモロッコの一つの風景だと思います。
危険性は理解したけれど、国が豊かになるに連れそんな独自の文化が減ってしまうのはさびしくもあります。

息子のおなかの傷はすっかり消えました。
日常の民間療法
モロッコではとにかく「自然のもの」が好まれます。食べ物はBIO(無添加、無農薬)が大好き。ちょっと体の調子が悪いなという時はまずハーブや自然のオイルを試すことが常です。
オリーブオイル
オリーブオイルは、子供が小さいうちは特に大活躍します。
使用例1
のどが痛い時大きいスプーンで1さじぐらい飲むと痛みが和らぐ(らしい)。はちみつを舐めろとも言われますが。
使用例2
耳に数適入れる。しばらくするとたまった耳垢が出てくるらしい。

怖いのでやっていません。
使用例3
赤ちゃんの鼻水が出ている時、鼻をかんでから鼻の穴に入れる。
よくわかりませんが義母が勝手にやってました。
使用例4
新生児期、頭に発生した脂漏性湿疹をふやかす。
脂漏性湿疹体とは頭皮から分泌される皮脂によってできるうろこ状のかさぶたです。真冬に生まれた息子はあまり沐浴しなかったので(義母の指示)ひどいものでした。
義母はオリーブオイルを手に塗っていることがあります。肌にいいのでしょうか?

アルガンオイルなどでもよいのですが、オリーブオイルの方が経済的です。
クミン
お腹が痛い時に、ティースプーン1杯ほどのクミンを口に入れ、水で飲みこみます。
クミンシードではなくて粉末状のものです。義母は子供に煎じて飲ませていました。
クミンは消化促進効果、その他諸々の効能があり体にとても良いものです。
モロッコ料理ではクミンの出番がとても多いのでモロッコ人は元気いっぱいなのかも!?
クローブ


日本では「丁子」として知られてるクローブ。
クローブは殺菌・鎮静作用があるので、口内炎ができた時、お湯で煎じて洗口液を作って使います。口に入れると少し辛いですが、さっぱりします。
歯医者で虫歯治療の際に使われる、仮の詰め物の匂いがするなぁと思っていたら、実際クローブが使われているそうです。
子供が虫歯になった時、モロッコの歯医者さんから、飲み薬の処方とともにクローブの洗口液で口を漱ぐことを指示されたこともあります。

私は温めた牛乳にクローブを1ついれて飲みます。
おいしいですよ。

私はインド料理店のクローブの入った白いご飯がすごく好きなんだー。
結構使い道があるんだね。
打ち身に生肉
夫が家で顔の一部をぶつけてしまいました。

早く!これを!!この肉を貼ってーー!!
義母が生の牛肉の切れ端を持って飛んできて、夫の顔に貼り付けました。
生肉にはいろいろな菌がついているので、衛生的にどうかと思いますし、効果があるのかも私は疑問です。
あくまでも私の想像ですが、物がない時代にひんやりとして貼りついてくれるものが生肉だったのではないかなと思います。
私は初めて見る光景だったのですが、これをやる国はモロッコ以外にもあるそうです。
何か理由があるのかもしれません。
シナモン
私は妊娠のごく初期に流産したことがあります。
事後処置は生理の血液で流すというものでしたが、出血量が少なくうまく出てくれませんでした。
その時に婦人科の先生から、「シナモンを水に溶かして飲んで」と言われました。血液の状態をよくするということかもしれません。
シナモンは好きなのですが、これは飲むのがきつかったので忘れられません。
お医者さんから言われたので民間療法とは言えないかもしれませんが、薬に対する感覚の違いを感じました。

