私はモロッコに10年以上住んでいます。その間、現在住んでいる家を含め5件の家に住みました。その経験をもとにモロッコの家の特徴や日本との違いなど気が付いたことについて書いていきます。
壁の色
住んでいる町によって外壁の色が法律で定められています。新築の場合は、壁の色を写真に撮って役所に提出し、許可をとらなければなりません。
私の住んでいるマラケシュはオレンジのようなピンクのような色で建物の壁の色が統一されています。遠出して帰ってきたとき、この壁の色を見ると、ほっとします。
隣家との壁の接着
隣の家の壁と自分の家の壁は接着しなければなりません。
隣家と接着する壁には当然窓が作れないことになります。そんなの嫌だ!と思うかもしれませんが、日差しがとても強い国なので、窓が少ないと、日差しを遮ることができるというメリットもあるのです。
また伝統的な住居スタイルとして、中庭を作るのが一般的です。広いスペース(中庭になる部分)を土地の真ん中に残し、それを取り囲むようにぐるりと部屋を作ります。窓が少なくても中庭から日光や風が入ってくる仕組みです。
デメリットは、壁が接着しているので、隣の家の生活の音が聞こえてくることです。私が子供を寝かそうとしていると、隣の部屋でヅヅヅヅーッ、ギギギーッ、ガタンガタン、と大きな家具を移動させる音がしょっちゅう聞こえてきてきました。私はイラッとするのですが、モロッコ人は気にならないようです。
たまに、外壁がグレーのブロックむき出しの家を見かけます。後から隣に家が建てられた場合、壁は隠れてしまうから色を塗らなかったのでしょう。また3階建ての家の隣に2階建ての家が出来た場合なども、グレー部分が残ってしまいます。正直なところ、汚らしく見えるので、マラケシュカラーに染めて欲しいと思うのです。
私の文章がわかりづらいので、写真を見てください。
色を塗っていない壁がお隣さんとくっつけなければならない面です。この家は今下塗り段階で、まだ仕上げ塗りではありません。ここ一戸建てなのでお隣さんと接着する壁も色を塗るはずですが、将来的には隠れてしまうので、あとからここだけ簡易的に塗るのです。
中庭
中庭を作るというのが、伝統的なモロッコの家でもっとも特徴的なことだと思います。広いスペース(中庭になる部分)を土地の真ん中に残し、それを取り囲むようにぐるりと部屋を作ります。窓が少なくても中庭から日光や風が入ってくる仕組みです。
外側からはどれも同じように見える家々も中に一歩踏み入れると、各家庭ごとにオリジナルな世界が広がります。とはいっても、中庭にはタイルが敷いてあり、多目的スペースとして使ったり、ソファーやいすを置いあったりと大体のところは同じです。
このあたり(マグリブを含んだ広い範囲)の人は、人間の視線、特に妬みの視線というのは魔力のような力があるといいます。そして、そのような視線で見られた人は、よくないことが起きると考えられています。そのため自分の持ち物を自慢したり、見せびらかしたりしてはいけないといわれるのですが、外壁を作り、中庭を作るというのは理にかなっているなと思います。
このような悪い視線を邪視というよ。邪視から守るためのお守りが、お土産屋さんで売ってる、ファティマの手なんだよ。
屋上
ほぼ100%の家に屋上があります。ここで洗濯物を干したり、鶏を飼ったり、干し肉を干したり、テレビのパラボラアンテナを設置したり、いろいろ使います。
それから、太陽熱を利用してお湯を沸かすためのソーラーパネルと水のタンクを設置する家庭も多いです。ただ、タンクとソーラーパネルがセットの場合は、お湯を沸かすだけにしか使えないようです。
隣の家と壁が接着しているので、屋上も壁一つ隔てただけです。簡単に乗り越えられるので夜中に泥棒が家々の屋上を伝って侵入するということは、よく聞く話です。
排水溝と雨樋
モロッコではタイルの敷いてある床は、砂埃がたまりやすいので、床に水を流して掃除をします。そして水切りワイパー(名前がよくわかりません)で水をきって終わりです。そのため中庭の床、二階の廊下などには排水溝が必ずあり、床面は水が流れやすいように排水溝に向かって微妙に傾斜が付いています。簡単ですっきりするので、この掃除の仕方が私はとても好きです。
屋上があること、床に排水用の穴があることから、日本にあるような雨どいはありません。
窓
モロッコの家の窓は、部屋の内側に開く観音開きのガラス窓が付いるのが多いです。そして窓の外には鉄の柵が付いており、これは固定されて動かすことはできません。防犯対策のためだと思われます。
デザインはさまざまでおしゃれだなと思うものもそうでないものもありますが、私は家々のこの鉄の柵をみるのがとても好きです。
ステンドグラスというか色ガラスをはめ込んだ窓にする家も多いです。私の家にも作りました。
太陽の光を通した影がきれいです。
壁はレンガ 声が筒抜け
モロッコの家の壁はレンガ。レンガというと、三匹のこぶたのお話のような、塊のものを想像するかもしれません。ですが、モロッコの家で使うのは、穴が開いているものです。コンクリートブロックを使っている場合もありますが、その場合レンガより家の中が熱くなるそうです。
コンクリートのほうが安いので、太陽が当たらない壁はコンクリートのブロックを使って、コストダウンを狙う場合もあります。
レンガを積み上げたら、コンクリートを塗り、その上から壁の色を塗ったり、タイル張りにします。
防音、防寒、防熱のためになにか施すことはありません。
そのため家の中の部屋はもちろん、隣の家の声もよく聞こえてきます。
モロッコの家に数件住んでみましたが、作りは大体同じです。モロッコの家は気候に適した家というか、夏の暑さ対策が最優先の家という気がします。
そういうわけで、モロッコの冬は気温的にはそれほど低くなくても、家は冷え冷えとしてとても寒いです。
地下室があるのは珍しくない
日本で「自宅に地下室がある」というと「お金持ちですね」と言われるかもしれません。
私が住んでいるマラケシュだと地下室がある家は結構あります。
地下は室温が地上より低くなるので、暑いマラケシュでは特に人気なのではないでしょうか。
昼寝の際、太陽の光が入ってこないので寝やすいという人もいます。
注意
いろいろ書きましたが、昔ながらのスタイルの家はこんな感じだったなーと思った事柄を書いています。新しい家、一戸建てなどでは中庭がなかったり、床に排水の穴がないことなどもあります。